2016年7月26日火曜日

[statphys:04339] 京大基礎情報学セミナー - 金成主氏(物質材料・研究機構)-7/28

{統計物理,力学系}MLの皆様

 京都大学の梅野と申します。

 基礎情報学セミナーを下記の要領で開催いたします。
 興味のある方のご参加をお待ちしております。

基礎情報学セミナー
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日時: 7/28(木): 14:00-16:00

場所: 京都大学吉田キャンパス総合研究10号館 211セミナー室
(For access see http://chaosken.amp.i.kyoto-u.ac.jp/access.html )

講演者: 金 成主(Kim, Song-Ju)博士@ 国立研究開発法人 物質・材料研究機構

タイトル:
揺らぎと拘束条件を活用した物理的計算はデジタルコンピュータを超えるのか?

アブストラクト:
利益の対立による不毛な争いを最小化できる「技術」を我々は持ち合わせているだろうか?

例えば, 交差点で信号が間もなく赤に変わりそうな状況で, 先行する車両が進路に停滞している
にもかかわらず, 停止することなく直進しようとする車は, 目的地により速く到着したいという
個の利益を追求する意思決定をしている. この車が交差点の東西方向の中央に停滞するせいで,
南北方向の青信号を直進しようとする他の車の進行が妨害される. こうして, 個の利益を追求した
利己的な意思決定により, 全体の利益が損なわれる. そればかりか, 道路は繋かっているので,
こうして作り出された南北方向の停滞が, 回り回って東西方向の道路の他所の新たな停滞を生み出す.
全体の不利益は, 利己的な恩恵にあずかれると判断した個の利益すらも損なう皮肉な結果を招き得るのだ.

こうした個と全体の利益の対立は, 交通渋滞のみならず, 様々な場面において立ち現れる深刻な問題である.
事実, コミュニティ間の対立や国家間の戦争も, 煎じ詰めれば部分最適と全体最適の不一致から
作り出される. いつの日か「全体最適解を導出する装置」が開発され, これに従うことに同意した人類が,
不毛な争いを最小化できる時代を迎えられると考えるのは夢想的過ぎるだろうか? このような同意を得る
思想的な観点から見ても, また, 実際の最適解計算における計算量の爆発をどのように抑えるのかという
技術的な問題から見ても, 「計算に自然現象を活用する」ことが有用であると思われる.

本発表では, 「コグニティブ無線のチャネル割当て問題」を例にして, ある種の問題群においては, 全体最適
を高速に導出できる物理的装置が存在することを示す. この「綱引きボムベ」と呼ばれる装置は, 体積保存則を
満たす物体の単純なダイナミクスに基づいており, その高効率性は「綱引き原理」として定式化されている [1].
複数のシリンダ内の二種類の非圧縮性流体を用いることで物理的に実装することが可能であり [2],
この「綱引きボムベ」を使うことで, NチャネルのM人の割当て問題に対して, 毎時刻 O(NM ) の評価値計算を
流体の物理プロセスに委ね, M回の操作 (シリンダ内の流体界面の上下運動)を繰り返すだけで, 自動的に
全体最適な割当てが導出される [3].

本発表では, 実際に, NICT, 東大, 東工大, 山梨大, Neel-CNRS( フランス)との共同研究を通じて
得られたいくつかの実装結果[4]も紹介する.


References
[1] S. -J. Kim, M. Aono & E. Nameda, "Efficient decision-making by volume-conserving physical
object," New J. Phys. 17, 083023 (2015).
[2] S. -J. Kim & M. Aono, "Decision maker using coupled incompressible-fluid cylinders,"
Special issue of Advances in Science, Technology and Environmentology B11, pp. 41-45 (2015),
Available from: http://arxiv.org/abs/1502.03890.
[3] S. -J. Kim, M. Naruse & M. Aono, "Harnessing natural fluctuations: analogue computer
for efficient socially-maximal decision-making," e-print arXiv (2015),
Available from: http://arxiv.org/abs/1504.03451.
[4] M. Naruse, S. -J. Kim, et al., "Single-photon decision maker," Scientific Reports 5, 13253 (2015).
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連絡先:
梅野健
京都大学大学院 情報学研究科 数理工学専攻
数理物理学講座 物理統計学分野
umeno.ken.8z@kyoto-u.ac.jp
http://chaosken.amp.i.kyoto-u.ac.jp/