首都大の花田康高と申します.
セミナーのご案内をさせて頂きます.
ご関心のある方のご来聴を歓迎致します.
なお,重複して受け取られた場合はご容赦下さい.
□□ 非線形物理セミナー □□
講師:秋本 琢磨 氏(慶應義塾大学自然科学教育センター)
日時:11月28日(月) 午後3時-
場所:首都大学東京 8号館(旧理学部棟)309号室
題目1:異常拡散における新しいタイプの応答理論
ーアインシュタインの関係の拡張と分布としての応答ー
題目2:脂質2重膜におけるトラップ時間のベキ則に起因する非ガウス的ゆらぎ
題目1概要:
近年、細胞内におけるマクロ分子の拡散の異常性が実験で観測されてきている。Golding & Coxによる細胞内におけるmRNAの拡散では、i)平均2乗変位が線形より遅く増大するという遅い拡散、ii)その拡散係数が実験毎にランダムに分布する事が発見された[1]。拡散係数の本質的なランダム性は、連続なトラップ時間を導入した連続時間ランダムウォークにおいて、トラップ時間の平均値が発散する場合に普遍的に現れる事がわかってきている[2,3]。このような系では、1分子軌道の長時間平均により得られる平均2乗変位がランダムに分布するため、外場をかけたときの応答を定式化する 事が困難な状況にある。
本講演では、遅い拡散を示す力学系を用いて、単一軌道に対するアインシュタインの関係の拡張を行う。重要なアイデアは、長時間平均による輸送係数をリアプノフ指数で割った量(エスコートされた輸送係数)を導入する事である。ホップのエルゴード定理より、エスコートされた輸送係数は一定値に収束する。さらに、エスコートされた拡散係数とドリフトの間にアインシュタインの関係が成立する事を報告する。
また、速い拡散を示す力学系に関しても応答理論を考える。速い拡散の場合、観測関数が非可積分関数となり、ホップのエルゴード定理が成立しないため、分布としての応答を考える必要がある。外場あるときのドリフトの速度の分布が一般化された逆正弦分布になる事を無限測度エルゴード理論を用いて厳密に示し、ドリフトの速度の(アンサンブル)平均値が外場に対して線形応答を示す事を報告する。
[1] I. Golding and E. C. Cox, Phys. Rev. Lett. 96, 098102 (2006)
[2] Y. He et al., Phys. Rev. Lett. 101, 058101 (2008)
[3] T. Miyaguchi and T. Akimoto, Phys. Rev. E 83, 031926 (2011)
題目2概要:
細胞内輸送では、分子の込み合いにより遅い拡散がよく観測されるが、その物理的なメカニズムはまだ明らかになってい
ない。実際に、Golding & Coxの実験における遅い拡散の原因は、ベキ的なトラップなのか粘弾性によるfrational Brownian
motionのような負の相関なのかは明確になっていない。脂質2重膜は2次元の流体として振る舞うが、その流動性は複雑
である。本講演では、分子動力学シミュレーションを用い、脂質2重膜における脂質分子の軌跡から拡散の異常性を明ら
かにする。1分子軌道を用いた長時間平均による平均2乗変位(TAMSD)の振る舞いとそのゆらぎの解析により、脂質2
重膜には、粘弾性だけでなくトラップ時間のベキ則が存在する事を報告する[4]。トラップ時間のベキ指数が3より小さい
ため、TAMSDのゆらぎが非ガウス的になる。
[4] T. Akimoto et al., Phys. Rev. Lett. to appear.
大学へのアクセスは
http://www.tmu.ac.jp/university/campus_guide/map.html
もしくは
http://www.spc.tmu.ac.jp/info/pdf/lanmap.pdf
をご参照下さい.
--
首都大学東京 理工学研究科 物理学専攻
非線形物理学研究室 花田 康高
hanada-yasutaka@ed.tmu.ac.jp