2018年1月13日土曜日

[statphys:05025] 立命館大セミナー 西口大貴さん 1/18

statphyMLのみなさま

以下のようなセミナーを開催いたします。
どうぞお気軽にご参加ください。

和田 浩史
立命館大学理工学部物理科学科

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タイトル:自己駆動コロイド粒子の鎖状構造の示す鞭打ち運動
西口大貴(CEA-Saclay & パスツール研究所(フランス))
日時:2018年1月18日 木曜日 14:30-16:00
場所:生物物理学研究室(BKCキャンパス ウエストウイング7階)

アブストラクト:
精子や藻類など真核細胞の鞭毛にみられる鞭打ち運動は、どのような仕組みで
どのような波が生じているのだろうか? 鞭毛の運動を理解するヒントを得る
ために、我々は自己駆動コロイド粒子でできた"人工鞭毛"の振る舞いを調べた。
具体的には、半球を金属でコートされた誘電体の球形の異方的なコロイド粒子
(ヤヌス粒子)を用いた。このヤヌス粒子は、鉛直方向に交流電場を印可 す
ると、それを動力源として水平面内を自己駆動する。さらに、交流電場の周波
数を調節することにより、粒子の進行方向(金属面と誘電体面のどちら を前
に進むか)や相互作用を制御することができる。
先行研究により、金属面を前に駆動する高周波数領域でヤヌス粒子が自己組織
化的に鎖状につながって駆動することは知られていたが、我々は、溶液の 塩
濃度を新たに制御パラメーターに加えることにより、誘電体面を前に駆動する
低周波領域でも鎖状構造が形成されることを発見した。
これらの鎖状構造は、先頭に負荷を加えると、鞭毛のような鞭打ち運動を示
す。鎖の先頭を固定すると、limit cycleと見なせる安定な鞭打ち運動をす
る。この鞭打ち運動は、ヤヌス粒子が押し合って内部に応力が蓄積されること
による座屈現象が主な要因とみなせる ため、内部の分子モーターの力により
座屈が生じる真核細胞の鞭毛と類似している。
生物実験で分子モーターの駆動力を瞬時に変化させることは困難だが、ヤヌス
粒子の推進力は印加電場の強度により容易に制御できる。これを利用し、 鞭
打ち運動の振動数の、鎖の構成粒子の推進力に対するスケーリング指数を測定
し、理論予測と比較したところ、理論と食い違いが見られた。この食い 違い
は、ヤヌス粒子間に働く引力が粒子表面の誘導電荷に由来すること、そして誘
導電荷が四重極子的な分布をしているとすることで説明できた。これ によ
り、測定の困難なヤヌス粒子の表面電荷分布に間接的な実験証拠を与えられ
た。本研究での鎖状構造の形成条件や鞭打ち現象の理解を通して、未解 明な
箇所の多いヤヌス粒子の駆動・相互作用の原理の理解を進めることができた。
本講演では、鞭打ち運動のPCA解析の結果や波の分散関係などの詳細な解析に
着いても紹介する。また、個々のヤヌス粒子が作る流れ場が鞭打ち運動 に与
える効果についても考察し、ヤヌス粒子の鎖のような"推進力による鞭打ち運
動"と生き物の鞭毛のような"鞭打ち運動による推進力"にどのよう な差異があ
りうるのかについても議論する。

[1] D. Nishiguchi, M. Sano: Phys. Rev. E 92, 052309 (2015)
[2] D. Nishiguchi, J. Iwasawa, H-R. Jiang, M. Sano: New J. Phys. 20,
015002 (2018)